マークダウン(Markdown)とは、# や - などのシンプルな記号で見出し・リスト・表を表現できる軽量な文書フォーマットだ。
.md というファイルを、ずっと「ただのテキスト」だと思っていた。
エンジニアとして何年か過ごしてきたのに、マークダウンをちゃんと使ったことがなかった。README を読んで「なんか見やすいな」とは思っても、自分で書く理由が見つからなかった。
その見方が変わったのは、AIと話すようになってからだ。いまでは同じ .md が、まったく違うものに見えている。この記事は、その「見え方が変わった話」だ。
同じファイルが、違って見えた瞬間
AIに何かを聞くと、返ってくる文章が整っている。見出しがあり、箇条書きがあり、コードはコードとして区切られている。最初はただ「読みやすいな」と思っていた。
あるとき、こちらの質問も箇条書きで書いてみた。すると返答の精度が上がった。書き方を変えただけなのに、と不思議だった。
そこで見え方が変わった。マークダウンは、人間が読みやすいだけの書式じゃない。AIも同じように読んでいる。人とAIが、同じ記法を共有している。
.md は「ただのテキスト」ではなかった。人と機械の両方が読める、共通の書き方だったのだ。一度そう見えると、もう元の「ただのテキスト」には戻れなかった。
なぜ、人にもAIにも読めるのか
理由は、マークダウンが「書いて良し・見て良し」だからだ。
テキストファイル(.txt)は軽くて手軽だけれど、読むと味気ない。見出しも表もない、ただの文字の羅列だ。
HTML は見栄えを作れるけれど、書くのが重い。見出し一つに <h2>タイトル</h2> と書く。構造を表すタグが本文に混ざって、生のままでは読みにくい。
Excel や PowerPoint はきれいな資料を作れるけれど、専用のソフトが要る。テキストとして扱えず、バージョン管理もしづらい。
マークダウンはその中間にいる。生テキストのまま読んでも意味がわかり、レンダリングすればきちんと見出しや表になる。書いた通りに見え、見えた通りに書ける。
そして、この「構造が生テキストの中に明示されている」という点が、AIにとっても都合がいい。# が見出し、- がリストと、記号で構造が一目瞭然なので、AIがパースしやすい。人間にとって読みやすい形が、そのまま機械にとっても解釈しやすい形になっている。
これは前にも感じたことがある感覚だ。機械が読むだけならバイナリでいい。でも人間も読んで直すなら、設定は .ini、データは .csv のように、テキストである方が都合がいい。マークダウンは、文書におけるその立ち位置だ。母語の違う人同士が英語で話すように、完全な母語じゃなくていい。お互いが読める一点で重なれば、それで橋になれる。
依存するソフトがなく、テキストエディターがあれば十分。Windows のエクスプローラーでも、最近はプレビューペインでそのまま整形表示される。専用のツールはいらない。
チートシート:代表的な記法
では、実際にどう書くか。記法の数はそれほど多くない。基本をいくつか押さえれば、今日から書き始められる。
見出し
# の数が見出しのレベルになる。多いほど小さくなる。
こう書くと:
# 大見出し
## 中見出し
### 小見出し
こう見える:
大見出し
中見出し
小見出し
太字・斜体
こう書くと:
**太字** と *斜体*
こう見える:
太字 と 斜体
リスト
こう書くと:
- 箇条書き
- 箇条書き
1. 番号つきリスト
2. 番号つきリスト
こう見える:
- 箇条書き
- 箇条書き
- 番号つきリスト
- 番号つきリスト
テーブル
こう書くと:
| 列1 | 列2 |
|---|---|
| A | B |
| C | D |
こう見える:
| 列1 | 列2 |
|---|---|
| A | B |
| C | D |
コードブロック
バッククォート3つで囲む。言語名を指定するとシンタックスハイライトが効く。
こう書くと:
```python
print("Hello, Markdown!")
```
こう見える:
print("Hello, Markdown!")
これだけ覚えれば、AIへの指示も、README も、ちょっとしたメモも、同じ書き方で書ける。
手札が一枚増えた
マークダウンに乗り換えよう、という話ではない。Word が要る場面もあるし、紙のメモが一番のときもある。
ただ、AIと話すとき、README を書くとき、考えを整理するとき——「マークダウンで書く」という選択肢が手元にあると、ふっと楽になる場面がある。手札が一枚増えた、という感覚に近い。
同じ .md が、もう「ただのテキスト」には見えない。人とAIの両方に通じる、共通の書き方。それに気づけたのが、この手札のいちばんの価値だと思う。